と、何やら大仰なタイトルをつけてみましたが、言うまでもなく私がその回答を持ち合わせているわけはありません。
ただ、先日(8月10日)にNHK・BS-1で放送された「BS1スペシャル コロナ危機 未来の選択『ジャレド・ダイアモンド~ 世界が連帯する“最後のチャンス”にせよ』」の内容が興味深かったので、軽くご紹介してみます。
ジャレド・ダイアモンド氏とは?
ジャレド・ダイアモンドさんは、現在アメリカUCLAで地理学を教える教授で、進化生物学、生理学が専門分野で、ノンフィクション作家としても活躍しています。
主な著書に『銃・病原菌・鉄』『文明崩壊 – 滅亡と存続の命運を分けるもの –』『危機と人類』などがあります。
番組での発言の中には「新型コロナを軽視してロクな対策をとらず、国民や国々を分断させている我が国の大統領」みたいな言い方で、トランプさんをボロクソにこき下ろしたりするなど、いくつも見どころ・聞きどころはありましたが、本来のテーマがずれるのでここでは割愛します。
で、「海外旅行」はいつから可能になるのか?
そんなジャレドさんは、「グローバル化」に関する質問の中で、こんな趣旨のことをおっしゃってました。
- 「ジェット機に乗って遠くの国へ出かける」ような旅行は、この先は当面難しいだろう。
- おそらく、来年(2021年)になっても難しいと思う。
- しかし、このことだけを捉えて「新型コロナウィルスのパンデミック」=「グローバル化の終焉」と考えるのは間違い。グローバル化にもいろんな形態がある。
- 「世界中の科学者による知見や知識の交換・交流」といった“情報のグローバル化”は、もっと活発になる。
つまり、「コロナのせいで直接的な交流ができなくなっても、情報で人と繋がり続けることができる」という見解をお持ちのようでした。
ジャレドさんは「コロナは大問題ではあるが、これによって人類全体が死ぬことはない。むしろ地球温暖化のほうが全人類の生存を脅かしている」ともおっしゃっていたので、おそらく「化石燃料を大量に燃焼させながら世界中を気軽に飛び回るスタイルの旅行」については「イケてない」「もはや時代遅れの行動」ぐらいに思ってらっしゃるのかも知れません。
つまりジャレドさんは、「特効薬やワクチンができたからといって、今までのような地球温暖化を加速させる経済行為自体を単に再開させてしまっては、コロナから何の教訓も得ていないことになる。コロナ禍をきっかけにして、人類は持続可能な文明構築に向けて連帯すべき」と考えていて、しかも「そのタイムリミットは30年ぐらいしか残っていないから、これが最後のチャンス」ともおっしゃっていたかと思います。
「海外旅行」は死語になるのか?
番組を見ていて、ジャレドさんの意見に共感できるところも違和感を感じるところもあったわけですが、まぁたしかに「感染症は世界的に収束したけど、人類による乱開発・乱獲、さらには気候の大変動によって“資源は枯渇し、植物は枯れ、水温が上昇し、魚もいなくなり、土壌も流失した国々”を旅行しても、そりゃ楽しくはないよね」という気はします。
しかも「ジェット機を使わず、船旅なら許容される」という単純な話でもないでしょうから、もしかすると「今後、人類の余暇活動として『海外旅行』というカテゴリー自体が存続し得るのか」ぐらいの大問題なのかもしれません。
ジャレド・ダイアモンドさん語録
ついでなので、番組内でジャレドさんが語った中で(旅行とは直接関係しないけれども)印象に残った発言を備忘メモとして羅列しておきます。
- 「疫病(天然痘とか)に免疫のあるヨーロッパ人が南米に渡来し、武器で殺傷する以上に、免疫のない南米人を疫病が殺してしまった」
- 「今回の新型コロナウィルスは、世界中で誰も免疫を持っていない。だから警戒が必要」
- 「政府から指図されるのが嫌いな個人主義型のアメリカ人と、共同体を重視して要請レベルでも順守する日本人は、対極的」
- 「新型コロナウィルスも2002年のSARSも、中国の“野生動物を取り扱う市場”から広まった」
- 「中国政府は市場での野生生物の売買を禁止したが、今でも“漢方薬”用として個人間での取引が続いている。これをやめない限り、今後も未知のウィルスが出てくる」
- 「“伝統は大事”と言うが、いい伝統もあれば悪い伝統もある。かつてニューギニアなどで行われていた『食人(主に脳みそ)』は伝染病の原因にもなっており、廃止させられた。当時の住民たちは『伝統だから続けたい』と抵抗したはず」
- 「権威主義的な国(おそらく中国あたりをイメージ)が強制的な封じ込めによってコロナを一気に収束させたりしているが、一方で良くないことも一気に強制実行できるのだから、羨ましがる必要は全くなし」
- 「かつて自然豊かで高度な文明が栄えたイースター島は、樹木を伐採しまくったため住民が滅びてしまい、モアイ像が残るだけになった」
- 「イースター島の住民は、『ヤシの木の最後の1本』を切り倒す時、何を思っていただろうか。メタファー(暗喩)として言えば、数十年後の人類が『2020年の人類は、どう思いながらこういうことをやっていたんだろう』と考えるのと似ている」
ジャレドさん、なかなかユニークなおじいちゃんだと思います。
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